大昔の日本人が衣服素材として用いていたのは、麻・苧麻・葛・藤・楮・しななどの植物繊維でした。
江戸中期、日本国内で木綿が普及しますが、しな布が織られている寒冷な地域は綿花が育たず、綿はとても貴重なものでした。
東北地方で刺し子や裂き織りが受け継がれているのはこうした背景があったからでした。
近代以降、高機能な化学繊維の開発、戦後の高度経済成長にともなった都市部への人口の流入により山村は荒廃し、それによりこれら植物繊維の織物(自然布)の需要は激減し、急速にその姿を消していきました。
しかし、かつては食物や家よりも重要だったものが布でした。
「女が何枚布を織れるかが何人生きられるかに繋がる」と言われたほどです。